はじめに
中世の終わりからルネサンスを経て、ヨーロッパ社会は大きく変化します。
産業革命や科学の進歩により生活様式が一新され、「美」や「健康」に対する考え方も近代的に発展しました。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、現代のエステサロンにつながる“美容の専門施設”がパリやロンドンを中心に誕生し、世界中に広がっていきます。
エステサロン誕生の背景
19世紀のヨーロッパは、科学技術や衛生学の進歩が人々の生活に大きな影響を与えました。
産業革命による都市化が進み、女性の社会進出も始まったことで、美容に対するニーズが急速に高まりました。
ファッション誌や広告の登場で「美しくありたい」という想いが一層社会に浸透し、専門的な美容サービスへの需要が増えていきます。
パリ――“美容の都”で生まれたエステ文化
特にパリは「美容の都」と呼ばれ、数多くの美容技術や化粧品ブランド、そしてエステサロンが誕生しました。
19世紀後半、パリではスパやマッサージ、スキンケアを提供するサロンが続々とオープンし、社交界の女性たちや著名人の間で大流行します。
皮膚科学や化粧品開発の進歩も相まって、「美しさ」を科学的にアプローチする時代が到来しました。
歴史に名を残すエステティシャンたち
19世紀末には、女性起業家であり美容家のエレーヌ・ルビンスタインやエリザベス・アーデンといった有名なエステティシャンが登場します。
彼女たちはパリやロンドン、ニューヨークなどにサロンを開き、独自のフェイシャルトリートメントやスキンケア化粧品を提案。現代エステの礎を築きました。
技術革新とサービスの多様化
近代エステサロンの特徴は、技術の進歩とサービス内容の多様化にあります。
初期はフェイシャルやボディマッサージが中心でしたが、やがて電気を使った美容機器(美顔器や脱毛器)、パックやスクラブ、アロマテラピーなど、さまざまな新メニューが導入されました。
衛生管理とプロフェッショナリズム
近代エステでは、清潔な環境で施術を行うこと、施術者が専門的な教育を受けることが重視されるようになります。
美容専門学校の開設や資格制度も始まり、「エステティシャン」という職業が社会的に認知されていきました。
エステサロンの社会的広がり
20世紀に入ると、エステサロンは上流階級の女性だけでなく、一般の女性や男性にも開かれた存在となっていきます。
都市部では街角にエステサロンが増え、日常的に通う「身近な美容の場」となりました。
美容雑誌や広告の普及により、エステティックの知識が広く共有されるようになり、美容の自己管理やウェルネスへの関心も高まります。
まとめ
近代ヨーロッパで誕生したエステサロンは、技術革新と社会の変化を背景に、今なお進化し続けています。
科学的なアプローチ、専門性、快適な空間――こうした近代エステの基盤が、現代サロンのサービスにもしっかりと受け継がれています。
次回は、日本におけるエステの伝来と発展についてご紹介します。どうぞご期待ください。